大阪地方裁判所 昭和33年(ワ)2114号・昭40年(ワ)132号・昭39年(ワ)1677号・昭33年(ワ)496号 判決
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〔判決理由〕≪証拠略≫を総合すれば、次のような事実を認めることができる。
訴外青山を被告との間の前記整地工事の請負契約は、宝塚市蔵人字樫ケ峯一、三八八の三五の山林約一万坪の整地工事を内容とするものであり昭和三二年末の段階ではまだその工事は完成していなかつたけれども、訴外青山と被告との合意により右請負契約を解約することとし、被告はそれまでの工事の出来高に対し当初の約定通り盛土工事一立方坪につき七五〇円の割合で代金を支払うことになつた。ところが訴外青山と被告との間に盛土工事の量について争いが生じた。訴外青山は本件整地工事の資金を原告らから借入れており、被告から工事代金を支払つて貰えないため、その返済の対策に苦慮していた。そこで訴外青山は、原告以外の債権者からの借入金は原告から更に借入をなして返済するとともに、原告に対しては本件工事代金債権を譲渡することとし、昭和三二年四月二七日原・被告および訴外青山の協議により、右盛土工事の出来高については後日双方立会いの上再調査して決定することとし、訴外青山の主張する一六六万二〇〇〇円のうち一〇〇万円を概算内払いとして原告を債権者、被告を債務者、期限同年一〇月三〇日とする準消費貸借に更改するとともに右債務の履行を確保するため、本件土地に抵当権を設定し、かつ被告が履行期までに右債務を支払わないときには原告は右債務の支払いに代え本件土地の所有権を取得できる旨の代物弁済の予約を締結した。そして、右契約に基き同年五月八日原告を債権者、被告を債務者として、被告が原告に対し工事代金未払い金を目的とする消費貸借上の債務一〇〇万円を負担することを承認し、右債務を担保するため本件土地に二番抵当権を設定するとともに、被告が履行期(同年一〇月三〇日)までに右債務を支払わないときには原告は右債務の支払いに代え、本件土地の所有権を取得することができる旨を骨子とする公正証書(甲第一号証)が作成された。なお右公正証書の作成に当つては、訴外青山が原告であると称して公証人役場に出頭し、被告とともに公正証書の作成を嘱託している。訴外青山は、原告の委任をうけ原告の代理人として公正証書を作成すべく、公証人役場に出頭したのであるが、代理人として公正証書を作成する書類がととのつていなかつたため、自ら原告であると称して公正証書の作成を嘱託した。被告は訴外青山からの再三の要求にもかかわらず、双方立会いの上盛土工事の量を再調査することに応ぜず、誠意のある態度を示さなかつた。
右認定に反する≪証拠略≫は信用できないし、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定の事実によれば、本件代物弁済の予約の附せられた準消費貸借上の債務の額は、一応の出来高工事費一〇〇万円とされているけれども、右予約締結の当時右出来高は明確に確定されておらず、後日双方が立会いの上、再調査した上で明確に確定すべきものとされていたのであるが、右予約当時、将来再調査さえすれば、右出来高は明確に確定され得る状況にあつたものであるから、このような債務額一〇〇万円についても、代物弁済の予約は有効に成立しうるものと解すべきであり、又双方の立会調査はその出来高算定の客観的正確性を確保することを意図したものであるから、被告が再調査に応ぜず、再調査について誠意を示さなかつた場合には、原告は、原告側だけの調査であつても、客観的かつ正確に明確にされたところによつて、少なくともその額が一〇〇万円に達しているときは、これにより代物弁済予約完結権の行使をなしうるものと解すべきである。前示のように原告側の調査によれば、工事代金額は一六六万二〇〇〇円(その算定が客観的に正確であること前認定のとおり)であり、本件一〇〇万円の準消費貸借上の債務は右工事代金債権の概算内払いであること前認定のとおりであるから、原告は金一〇〇万円の債務の弁済に代えて本件土地の所有権を取得することができるものというべきである。(山内敏彦 高橋欣一 小田健司)